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TOMOX NEW YORK

ニューヨークで生活する日本人アーティストの日々の徒然日記。 ニューヨーク情報もお送りします。

ちょっとマメに更新。
今日は見てきた映画の話。


先日アカデミー賞を取ってから、マンハッタンでも2箇所で公開されている「おくりびと」。
プレミア上映ではもっくん他、キャスト・スタッフもニューヨーク入りしてて、私はプレミアショーのチケットの抽選に応募してみたんですけど、応募数が多すぎたとの事で敢えなく敗退、今回のリベンジ鑑賞となりました。
(ちなみにプレミアの2,3日前にJFKで内田也哉子さん見かけましたっす)


で、「おくりびと」......
ご存知ない方の為に、この映画は本木雅弘演じる主人公がオーケストラのチェリストという仕事を突然失い、妻と共に故郷の山形へ帰り、納棺師の仕事に就く....というところから始まります。
納棺師って仕事、聞き慣れないし、この映画が話題になって初めて私も知りました。


で、感想。
着想、テーマは素晴らしい。
物語の大体の構成もいいなーと思う。
でもこのシーンもっとさりげなく出来ないかなー、ちょっとドラマであり演技であると感じてしまうな、アジアのメロドラマに見えるな、と思うシーンもあった。
感じ方の問題かも知れないっすけど、そういうところでチープな作りに見えてしまっては勿体ないなーと思う。
もっくんも頑張ってはいたが、主演の2人が若すぎるのかも知れない。
(「若く見えすぎる」のかな。もっくんって40くらいになってる筈だよね)
もっと演技の上手い人がさりげなく演じる方がいいんじゃないかなー。
特に広末涼子、しょっぱなから着ているものもフレアスカートにハイソックス、とオフィス帰りの勤め人には見えないくらい子供っぽい。
人妻役にしては、スッピンぽい顔といい喋り方といい、ちょっと子供じみすぎてやしないかなぁ。
山崎努さんの芝居があればこそ、映画が引き締まってたかなあ。
余談ですが、映画の中の山崎努さんの部屋が、ジャングルみたいに観葉植物だらけで、その中で火鉢みたいになってるテーブルがあって、すごく素敵だった(またその火鉢で、フグの白子を焼いて塩かけて食ってんの・涙)。
死を扱う仕事をしている人は、ああやって生命に囲まれて暮らしたいものかも知れない。
窓の外の深閑とした雪景色と、部屋の中の湯気やたくさんの緑の対比が、比喩的に描かれているなーと思いました。


文句も言ってますが泣かされるシーンは何度もあって、私も泣けてきたがアメリカ人達はもっとおおっぴらに泣いてました。
途中でグシュグシュする音、鼻をかむ音も何度も映画館の中に響いてた。
「肉親を送り出す」悲しみは万国共通であり、訴えかけやすいテーマなんですね。


ところで主演の本木さんは、この映画の原案を15年も温めていたそうです。
原案となったのが青木新門さんの「納棺夫日記」という本。


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   納棺夫日記 (文春文庫)



青木さんがこの本を出して直ぐにもっくんから連絡があり、もっくんが出版するインド旅行記に「納棺夫日記」に一文を引用させて欲しいという申し入れがあったそうです。
その一文が、青木さんがひとり暮らしの老人が真夏に亡くなってそのまま1ヶ月も放置されていた遺体を清めた時の話で、床に残された蛆を掃き清めていた時のこと。

「蛆も命なのだ。そう思うと蛆たちが光って見えた」

という一文が、ガンジス川の岸辺で送り火を手にしたもっくんの写真に添えられているそうです。
インドでの生と死が当たり前のように混在一体として存在する体験を通して、蛆の光に共感したまだ20代のもっくんが温め始めた企画だった訳ですね。


しかし、青木さんはこの映画を秀作としながらも、原作者としてクレジットされる事を拒否しています。
理由は青木さんのホームページに詳しく書かれていたので気になる方は読んで頂きたいのですが、彼は納棺の現場で死後の世界、浄土というものを実感できるようになり、「後の世を渡す橋」の一助になればとこの本を記されたんだそうです。
彼によると映画「おくりびと」はヨーロッパ近代思想の人間愛で終わっており、「著作権を放棄してでも「納棺夫日記」と「おくりびと」の間に一線を画すべきと思った。妥協することの出来ない一線であった」と書かれています。(詳しい文章は彼のホームページでご覧下さい)


ただ西洋的「人間愛」での描かれ方だからこそ、この映画は万国共通に理解しやすく、海外で評価を受けているのだとも言えます。
原作の境地からは離れたものになってはいますが。
長年死者を扱ってこられた方が到達した心境は深い。
この原作、未読なんですけど、日本に帰ったら是非とも読んでみたいと思います。

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テーマ:ニューヨーク - ジャンル:海外情報